光のもとでⅠ
『蒼樹は一般的な考えができないわけじゃない。ただ、そのうえで自分の考えを通すことができる人間。人の意見を受け入れる柔軟さを持っているだけ。ほら、建築家ってさ、そもそも発想の宝庫みたいな人間だし、人に望まれるものを自分が作りたいものと融合して形にしていくだろ。つまりはそういういこと』
「なんとなくわかる気がします。ってことは、俺、人選ミスはしてないってことですよね?」
『俺だと力技でねじ伏せるとかそんな手法を言い出すし、蔵元は一般論から外れない。湊ちゃんはぶっ飛びすぎているのにどこか型にはまっているし、静さんも力技が得意。下手したら言いくるめられて終わりだな。だから、人選は間違ってないんじゃないか?』
「ありがとうございます。なんとなくほっとしました」
『あぁ、存分に蒼樹の考えを聞いてみるといい』
 そこで携帯を切る。
「あんちゃん、あんちゃんって意外と変なところで人望があるんだね」
 真面目にそう思った。
 あんちゃんはというと、
「だから先に言っただろ? 俺はそこら辺のひとりの人間で、自分の主観でしか答えられないって……」
 あぁ、それはこういう意味だったのか……。
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