光のもとでⅠ
「……答えは出てません。でも、きっと俺は大丈夫です」
『若槻が大変なときに側にいてやれなくて悪い』
「人は心だけでつながれると思いますか?」
『は?』
「もしそうだとしたら、俺の周りに絶対的に必要な人たちはいつもいるんだと思います」
『なんだそれ……』
「俺が出したひとつの答え」
『そっか』
「そうです」
 電話はそれで切った。

 あんちゃんがサッパリした身なりで部屋に戻ってきて、「お先」と口にする。
「俺もサッパリしてくる」
 昨日の今日で、心にしこりはあるものの身体が軽い。
 体中痛いのに、なんだか変な感じ。
 気分がハイっていうのとも少し違う。
 でも、この不思議な感じは癖になりそうだ。
 風呂から上がり、あんちゃんと一緒に十階へ行くと、オーナーと蔵元さんがコーヒーを飲んでいた。
< 1,302 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop