光のもとでⅠ
「気持ちだけでも楽にしてあげないと……」
 そう呟く顔は、どこにでもいる恋に悩む人のものだった。
 この人らしくない。秋斗さんらしくない。藤宮の人間っぽくない。
 そもそも、リィの気持ちを楽にするってどういうことだろう。
「俺は一歩後退だよ」
 秋斗さんは笑って見せた。
 その笑顔すら痛々しい。
「一歩後退ってなんですか?」
「一端手を引く。付き合うとか、キスとか、そういうことすら彼女の負担になるというなら、一度距離を置いて彼女を見守るしかないだろ」
 まさか――。
「欲しいものやっと手に入れたんでしょっ!?」
 それを手放す? この人がっ!?
「それで彼女がつらい思いをするなら、自分を傷つけてしまうようじゃ意味がないんだ」
 ――深い。
 秋斗さんがリィを想う気持ちはとても深いものに思えた。
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