光のもとでⅠ

「蔵元さん……？」
　助手席の窓が開き、
「どうぞお乗りください」
　と、言われる。
「ラッキー」とすばやく乗り込む海斗くんに引っ張り込まれるようにして車に乗った。
　司先輩は助手席。
　車の中は涼しく、馴染みのない香りがした。
　少し苦みを感じる匂い。
　もしかしたら蔵元さんはタバコを吸う人なのかもしれない。
　そんなことを考えているうちに、マンションのロータリーに着き、そこで車を降りた。

　フロントを通ると、
「おかえりなさいませ」
　と、コンシェルジュに出迎えられる。
　これにもだいぶ慣れたけれど、未だにコンシェルジュが何人いるのかわからないし、顔と名前が一致している人は少ない。
　エレベーターに乗ると、
「俺ら、着替えてからゲストルームに行くから」
　と、海斗くんに言われ、私はひとり先に九階で降りた。