光のもとでⅠ
「悪い……痛かった?」
「ごめんなさい……そこは痛いから今日は嫌です」
「わかった。……首元に触れる」
 と、前置きをされ、本当に触れるだけ。手の平を当てられた。
 首の擦過傷は少し前に治っていて、痕はほとんど残らないくらいきれいに治った。
 でも、先輩はマッサージをするとき、肩や首付近に触れる際には必ずこうやって前置きをしてくれる。
「首は大丈夫みたい……」
「少しずつ力を入れるから」
 と、徐々に両手が肩の方へと移っていくと、ざわり、と嫌な感じがした。
 左側よりも先に右側の肩に手が触れたそのとき、体中から血の気が引く思いだった。
「い、やっ――」
 咄嗟に手をどけられるものの、身体が小刻みに震え出す。
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