光のもとでⅠ
「……翠?」
 痛みじゃない……。
 この感覚は痛みじゃない――。
「翠っ!?」
「ごめ、なさい……」
「痛み?」
「違っ――」
「……翠、呼吸を落ち着けよう」
 うつ伏せの状態から蹲るように横向きに丸くなった。
 左手で右肩をぎゅっと掴んだまま。
「兄さんか若槻さん呼ぼうか?」
 私は断るために首を振った。
「……手は?」
 と、司先輩の手が前に差し出される。
 その手にゆっくりと自分の右手を重ねた。
「……わかった」
 先輩はそう言うと、ずっと手を握っていてくれた。
 呼吸がそれ以上ひどくなることはなく、薬のせいか少しずつ少しずつ意識が薄れていく。
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