光のもとでⅠ
 "大丈夫"――。
 さっきは安心できたのに、今は全然安心できない。
「浮かない顔だね?」
 浮いた顔ができるわけがない。
「テストが終わったら一緒に実家へ行くかい?」
「……いいんですか?」
「あぁ、かまわないよ」
「行きたい……――でも、やっぱりいいです」
 迂闊に思ったことを口にするんじゃなかった……。
「どうしてだい?」
「今の私が行ったら、栞さん、無理して出てきちゃうから」
 栞さんは優しいから、人のためになることをするのが好きな人だから。
 だから、具合が悪い私を見たら放っておけなくなる。
 そんな自分が会いにいくべきではない……。
「君は色々と先回りして考えるのが得意だね? そんなことだと損をするよ?」
 静さんは覗き込むように私の顔を見た。
 秋斗さんや司先輩とは違う顔立ち。
 でも、誰が見ても格好良く見えて、絶対に四十代半ばには見えないと思う。
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