光のもとでⅠ
「君はうちのホテルのお姫様なんだよ? もう少しわがままになってもいい。今の君はちょっと聞き分けが良すぎる。全部を呑み込もうとするとお腹がいっぱいになって、余計にものが食べられなくなるよ」
 そんなふうに言ってはポンポンと頭を二回軽く叩かれた。
 二回のポンポンは私と蒼兄の合図……。"大丈夫だよ"の合図。
 静さんはそんなことは知らないはずだけど、でも、私は意図も簡単に術中にかかる。
 そして、甘えが出てきた私はこんなことを訊いてしまった。
「秋斗さんはお仕事忙しい……?」
「少し前にトラブルは解消したって聞いたから、そのうちひょっこり帰ってくるだろう」
 ……唯兄と同じ答え。
「秋斗がいないと寂しい?」
 少し離れたところから湊先生に訊かれた。
 寂しいというか、気になる……。
「よくわからないんですけど、気にはなります。普段いる人がいないと気になる……」
「なるほどねぇ……。とっとと帰って来いって翠葉がメールしたら飛んで帰ってくるんじゃないの? あんたたち、一応付き合ってるんでしょう?」
 湊先生はソファに身体を預けたままそう口にし、海斗くんは「今回はどこに行ったのかな?」なんて疑問を口にする。
< 1,388 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop