光のもとでⅠ
「先生、この紫陽花は何色……?」
 点滴の針を入れ終わった先生が顔を上げ、
「ブルーだと思ったわ」
 そのあと、紙テープで念入りに針とラインを固定された。
「ブルー……」
 ならば土質は酸性なのだろう。
 土質がアルカリに傾くほど、紫陽花の色は赤味が増して紫になるのだ。
 きっときれいに、誇らしげに咲くのだろう。
 いくつもの花弁が一致団結して球体に近い半円を作り出す花。
 まるで花嫁さんが持つウェディングブーケを小さくした感じがして、私は紫陽花というお花が大好きだった。
 小さい子どもに持たせると、ひとつだけでブーケを持っているように見える。
 ひとつでたくさん得した感じ。
「何?」
「紫陽花のお花ってウェディングブーケみたいですよね」
「あぁ、ラウンドブーケに見えなくもないわね」
「色付く前のちょっとアイボリーの状態が、なんだかとてもウェディングカラーっぽくて好きなんです」
「へぇ~、面白い発想ね。色が付く前、確かにほんのりと色づく感じがきれいよね」
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