光のもとでⅠ
 食欲はそんなにないものの、手で食べられるものはとてもありがたい。
 けれど、これは蒼兄からの無言のノルマなのだろう。
 そう思うと少しだけ気が重くなる。
 外は雨が止んでいるものの、灰色の雲が空いっぱいに広がっていて、強風はまだおさまってはいなかった。
 時折、隙間風のようなピューという音が聞こえてくる。
 それは、換気扇を止めると嘘のように止んだ。
 ノルマ化されたご飯を一時間半かけて食べ終わると薬と睨めっこ。
 朝の分を飛ばしてしまったから、今朝の分を飲むとしたら、お昼の分は三時か四時に飲むことになりそうだ。
 しかも、薬を飲むイコール休むことが必須なわけで、これから寝たとして起きれるのは二時くらいだろうか……。
「翠葉、勉強は大丈夫なのか? 俺、夕方前には出かける予定があるけど、それまでなら見る時間あるよ」
 蒼兄の勉強は書いて覚えろ、読んで覚えろ、だ。
 今の私は読んで覚えることしかできない。
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