光のもとでⅠ
 私はひとつも口にしていないのに、どうして秋斗さんは全部わかってくれるんだろう。
 どうしてそんなに優しくしてくれるのだろう。
 私はこんなにも何も返せない状態なのに。
「好きな子のわがままはかわいいよ。どんなことでもね。前にも言ったでしょ? 君にされることならなんでも受けるって……。これもそのひとつだよ」
「……秋斗さん、ごめんなさい――」
 こんなことしか言えない自分が情けない。
「翠葉ちゃん、どうせなら"ありがとう"って言って?」
 どうして、ありがとう……?
「翠葉ちゃんには"ありがとう"って言ってもらいたい」
 今私にできることは、その言葉を返すことのみだ。それでも許されるだろうか。
「秋斗さん、ありがとう……ございます」
「うん、こちらこそありがとう。これからもよろしくね」
 満面の笑みを返され、その笑顔を見たら体中の力が抜けた。
 それがわかったのか、
「少し休むといいよ。俺、今日はこれで帰るから」
 と、秋斗さんは部屋を出ていった。
 ドアが閉まってからも、私はドアから目を離すことができなかった。
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