光のもとでⅠ
 ほかに何かかけられる言葉を探していると、
「幸倉に戻ったらマッサージできないけど?」
 司先輩はドアに近い壁に寄りかかって腕を組んでいた。
 いつもと変わらない先輩に少し安堵する。
「わかっています。でも、それでいいと思う。先輩はインハイが近いのだから、私のことではなくて自分のこと考えなくちゃですよ? 弓道がどういうものかはわからないけれど、やっぱり調整期間はあるのでしょう? 試合は観に行きたいですから勝ってもらわなくちゃ」
 どこにも後ろめたい要素がないからか、自然と笑うことができた。
 先輩の弓道をしている姿は好き……。
 見ていると、引き込まれるほどの静謐さがあって――。
 急に静かになってしまった保健室。
 何か話さなくちゃ、と思って頭の中央に陣取っている話題を口にした。
「あのね、昨日秋斗さんと会ったの。それでね、お付き合いは解消になりました」
 要約したのか端的になったのか、よくわからない文章。
 桃華さんと司先輩は軽く口を開けた状態で少し放心状態。
 でも、このふたりはすぐに切り返してくる人たちだ。
 その前に話を終わらせよう。
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