光のもとでⅠ
 私もお母さんもびっくりしていたけれど、それで楽になれるのならなんでも良かった。
 薬を飲むと意識が朦朧とし始めた。
 薬が効いている……。
 痛みが引いていくというよりは、自分の意識が薄れていく感覚のほうが強かった。
 自分では眠っているのか起きているのかすらわからない中、ふわりふわりと思いが取り巻く。
 唯兄はここにいたら仕事ができないんじゃないかな、とか。お母さんは今からがすごく忙しくて秋には大詰めに入るんじゃなかったかな、とか。
 痛みが起きてもサイドテーブルにお水と薬さえあれば自分で飲むことは可能だし、誰がいてもいなくても、痛みが引くでもなくなるわけでもない。
 ならば、人がこの家にいる必要はないんじゃないかな、とか。
 不健康といわれるかもしれないけれど、ご飯なんて食べられる気がしないからゼリー飲料があればカロリーだけは摂れそうだし……。
 人の手を煩わせるのは嫌だな……。
 何よりも、重荷になるのが嫌――。
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