光のもとでⅠ
 だからといって、それが自分にも当てはまるとは一ミリほども思えず、呑み込むこともできず、私は薄く笑うに留めた。
 お魚の小骨が喉に引っかかってる、そんな感じだ。
 そんな私の心境を察したのか、
「今はわからなくていいよ。でもね、いつかわかる日が来ると思う。だから、心のどこかに置いておいて?」
 向後さんはそう言って笑った。
 そのあとは、お母さんと向後さんが天蓋を取り付けると奮闘し始めた。
 結局、どうやっても手が届かないことが発覚し、蒼兄が帰ってきてから付けてもらうことになった。
 中途半端に取り付けられた天蓋は、ベージュがかった白いリネン。
 この生地の薄さなら、天蓋を閉めても家具や人が透けて見えるだろう。
 なんの飾り気もないというわけではなく、生地の縁には光沢のある糸で刺繍が施されている。
 お姫様のようなレースではないけれど、ちょっと御伽噺に出てきそうなベッドに見えなくもない。
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