光のもとでⅠ
「お父さん、感性が似ていても、それはお母さんじゃないでしょう? それに、人任せにするのは何よりもお母さんらしくない」
「……翠葉は手厳しいなぁ」
 お父さんは頭をソファの背もたれにくてっと置く。
「リィ、リィはどうして入院しないの?」
 唯兄の問いかけはもっともなものだった。
「病院が――病院が嫌いなの」
「でも、リィが入院すれば全部片付く問題じゃないの?」
 その言葉に何も返すことができない。
 口を真一文字に引き結ぶと、
「唯くん、翠葉は入院したらいつ退院できるのかがわからないから怖いんだよ。それに、入院して待っているのはつらい治療なんだ。しかも、それで治る治療ならともかく、症状を一時しのぎで緩和させるだけのもので……。だから、怖いんだ」
 すべてを理解してくれていたお父さんの言葉に涙が零れる。
 お父さんはそんな私を優しく引き寄せてくれた。
 お父さんのぬくもりは久しぶり……。
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