光のもとでⅠ
「そっか。根本治療じゃないんだ……」
「父さん、なんとか母さんを連れて帰ってよ。翠葉のことは俺らが見てるし、どうにかするから。今はたぶん、母さんがここにいるだけで翠葉の気持ちに負担がかかる」
「……そうだなぁ。でも、碧も言い出したら聞かないんだよなぁ……。りっちゃんになんとかしてもらえないか相談するかぁ? それか、静に現場の責任者がその場にいないとは何事だって突っ込んでもらうとか? でも、静も碧にはごく甘だしなぁ……」
 途方に暮れているお父さんが少々かわいそうになってくる。でも、お母さんは今ここにいるべき人じゃじゃない。
 親の責任や義務。社会への責任や義務。それらを秤にかけたいとは思わないしかけるつもりもない。
 でも、大きなプロジェクトの一部として動いている人なのだから、それだけの力量があって社会貢献ができるのだから、こんなところにいたらだめ。
 お母さんにはずっと私の憧れでいてほしい。私の、自慢のお母さんでいてほしい。
 だから、職場に戻ってほしい――。
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