光のもとでⅠ
 でも、平坦な白い天井が見えないのはいい……。
 白い天井はどうしても病室の天井を彷彿とさせるから。
 目が覚めたとき、ベージュの天蓋が目に入るだけで、自宅にいることを認識できる。
 先生は、「調子はどう?」なんて訊いた割に、「まぁいいわけないんだろうけど」と自分で答えを出してしまう。
「その後、痛みの範囲は広がってる?」
 声のトーンを落として訊かれた。
「いえ、痛みの範囲は広がっていません。でも、胸と背中以外の場所が痛むことが多くなってきてはいます」
 鎖骨や肩、腕や手首、腰までもが常時痛くなり始めている。
 そして、痛みが移動していくことに恐怖を覚えていた。
「そう、ご飯は?」
「……実は、お箸を持つことができなくて……。ステンレスのフォークやスプーンも痛いんです」
「……もっと早くに言いなさい」
 湊先生はバッグの中からプラスチックのケースを取り出した。
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