光のもとでⅠ
 半透明のケースに入っていたのはプラスチックでできたフォークとスプーン。
 ほかにもプラスチックのマグカップを三つ渡された。
 カップを手に取ると、びっくりするほどに軽かった。
 最近では、ガラス製のグラスも陶器のマグカップも、重くて時に落としそうになっていたから。
 大好きで愛用していたクリスタルのグラスなんて重くて重くて、差し出されても躊躇してしまうほどだった。
 そんな私を見てお母さんは怪訝な顔をしていたけれど、意味まではわからなかったみたい。
 そう、私はまだお母さんにもお父さんにも、ほかの誰にも現在の病状を言えてはいないのだ。
「……ありがとうございます」
 俯いたままお礼を言うと、
「礼なら若槻に言いなさい」
「え……?」
「もしかしたらそうなのかも、って若槻から連絡があったのよ」
 そう、なの……?
 唯兄はいつ気づいたのだろう。
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