光のもとでⅠ

21

 点滴をし始めて少しすると手首が痛くなってきた。
「あ……カイロしてない」
 でも、自分の手の届くところにカイロはない。
 ふとファミリコールを押そうとして、指はボタンから離れていく。
 今、この家には両親もいるのだ。
 蒼兄と唯兄だけなら間違いなく押したであろうボタン。
 私は少し悩んでから携帯電話を手に取った。
「……唯兄、かな」
 深くは考えず、本能的に唯兄を選んだ。
 通話ボタンを押す前に、どうしてかな、って少し考えたらとてもひどい答えが出た。
 ――血がつながっていない人だから。
 なんてひどいんだろう……。
 通話ボタンを押すと、「リィ?」といつもと変わらない声が聞こえてくる。
「唯兄、あのね、手首が痛くて……」
『わかった、カイロね。すぐに行く』
 そうして聞こえてきたのは足音ふたつ。
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