光のもとでⅠ
「そう……。黙っててごめんね」
 顔を上げると、今にも泣きそうな蒼兄の顔があって、また手元に視線を戻した。
 あのとき、試験だけは全部受けたかったから。だから、こんな症状は誰にも言えなかった。
「湊さんは知ってるんだよな?」
「うん……試験最終日に気づかれちゃった」
「気づかれちゃったって、翠葉っ――」
 そう、私は湊先生にすら言うつもりがなかったのだ。
 だって、今までだってこの痛みを緩和することしかできなかったのに、痛みが広がってるなんて言ったら困るでしょう?
 それに、誰に話したからといって楽になれるわけでもない。
 それなら、言っても言わなくても同じことだと思ってしまったのだ。
 重苦しい空気の部屋に、
「そろそろお昼よ」
 と、お母さんの声が響いた。
 その声に三人が一斉にお母さんを見る。
「……何?」
 聞かれて、ない……?
< 1,497 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop