光のもとでⅠ
「あら、かわいいカトラリーね」
 お母さんが部屋に入ってきてテーブルに置かれたものに手を伸ばす。
 どうしようっ――。
「あぁ、それね。湊さんがショップで見かけてかわいさのあまりに買っちゃったんだって」
 何食わぬ顔をしてそう口にしたのは唯兄だった。
「でも、よくよく考えてみたら自分が使っているところが想像できないってリィに持ってきたみたい。ね?」
 振り返る唯兄は「うん」と言え、と目が言っていた。
「……う、ん。そう言ってた……」
 心の中で、「唯兄が」と付け足す。
「マグカップもお揃いなのね? かわいい~。ポップな色のものなんて翠葉は選ばないものね?」
 言いながら、お母さんはそれらを簡易キッチンで洗い始める。
 なんの疑問も抱かなかったらしい。
 ほっとしているのは私と蒼兄だけみたい。
 唯兄はというと、普通の顔をして洗い終わったらそれらを布巾で拭く手伝いをしていた。
 唯兄、役者さんになれそう……。
 そう思ったのは私だけじゃないと思う。
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