光のもとでⅠ
 気づけば午前中に入れてもらった点滴があと少しで終わるところだったのだ。
 一本三時間で落としてる勘定。
「その前にトイレに行こうか」
 言われて、私は栞さんお腕を借りてトイレに行った。
 こんなに細い腕を頼りにしていいのだろうか、と躊躇する私に、
「私、元看護師よ?」
 と、栞さんは笑う。
 腕に力をこめると、それ以上の力で支えられた。
 部屋に戻り点滴の交換が終わる頃、両親と静さんがお茶を持って部屋に入ってきた。
 お母さんは無表情で、トレイを置くとすぐに部屋を出ていってしまう。
 お母さん……?
「翠葉ちゃん、栞もだいぶ回復したけれど、まだ本調子じゃないんだ。あと三、四日は休まなくてはいけない。だからその間は碧に付いていてもらいなさい」
 そう切り出したのは静さんだった。
「え……?」
「だから、あと三、四日は碧がここにいることになる。いいね?」
 最後の言葉には力がこめられていた。
 まるで、ここが妥協点だとでも言うように。
< 1,509 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop