光のもとでⅠ
「中でも司先輩にはすごくお世話になっているの。同い年だけど一学年先輩で、私が具合が悪いとき、たいてい先輩が見つけてくれて保護してくれる。もうずっとお世話になりっぱなし」
「あら、それじゃいつかお礼を言わなくちゃね」
「でもね、この先輩すっごく容赦のない人なの。根は優しいのだけど、言葉は辛辣。何度も泣きそうになったし、実際に泣いちゃったこともある。……容赦ないけど、いつでも私のことを思って口にしてくれている言葉だった」
 街中でのいきさつを話すと、
「それはそれは……頭を下げてお礼を言いたいわ」
 と、お母さんは苦笑を漏らした。
「箱庭で育ててしまったのは私たち親の失敗だわ。でも、ある程度の世間は知っていてほしい。……これから、今までにないことがたくさん起ると思うけど、すべて自分で考えようとしないで、蒼樹なり唯くん、周りの友達に相談しなさいね。もちろん私でも零でもかまわないから」
「うん……」
「翠葉、あなたは確かにもう十七歳だけれど、私たちからしてみたら、いくつになっても子どもに変わりはないの。親は子どもが心配なものだし、子どもだって親が年をとれば心配をするようになるでしょう? そういうものなのよ。年がどうこうで大人子どもと言うわけじゃないわ。家族においてはその関係性はずっと変わらないの」
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