光のもとでⅠ
 森の木々は阻むものを何も知らないように天へ向かって伸びる。その様がひどく美しく見えた。
 私もこんなふうに真っ直ぐに生きられたらいいのに。
 木のように人生を送る人はいるのだろうか。
 ただひたすらに真っ直ぐ、目的を目指すようにわき目も振らず――。
 ふと、司先輩が頭に浮かんだ。
 司先輩はお医者様になるために、日々勉強を欠かさない。
 ……きっと具合の悪い人を放ってはおけない人なのだろう。
 なんだかもっと違う意味で親しくなれた気がしていただけに、昨日の言葉と今の想像を照らし合わせてしまうとひどくショックだ。
 ズン、と気持ちが沈むのがわかるくらいには……。
「でも、もともと女子は苦手って言ってたし……」
 どうにかして自分を納得させようと試みる。
 今まで、司先輩には彼女がいたことはないのだろうか。
「そっちのほうが不思議……」
 あんなに格好良くて頭も良くて優しくて……。
 現に学校中の女の子に騒がれるような人なのに、浮いた話ひとつ聞いたことがない。
< 1,567 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop