光のもとでⅠ
 私は痛みがひどくなる前にどうでもいいことを考える癖がつき始めていた。
 神経をほかに逸らすために、痛みに集中しないために、どうでもいいことを掘り下げて考える。
 自分でも思う。
 なんとなく堅苦しい話を上っ面だけを掠めた考察で理屈っぽいだけだな、と。
 きっと筋などどこも通っていないし、矛盾点だってあちらこちらにある。それに、起点となった場所にすら戻ってこれない話。
 湊先生は毎日のようにそんなどうでもいい話を聞きにくる。
 別に話を聞きに来ているわけではなくて、点滴の処置をするときになんとなくこんな話になるだけ。
 私の体内はずいぶんと水分が足りていない状態らしく、血液循環量にも問題が出始めているらしい。
 一言に水分といっても、水だけではいけない。
 いつもなら薄めたポカリスエットなどを飲んでいたけれど、今はそれすらも受け付けなくなっている。
 何も混じることのない水しか飲めないのだ。
 それも、氷が入っているもの限定。
 身体を冷やすとわかっていても、単なる水よりも氷水のほうが飲みやすかった。
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