光のもとでⅠ
 固形物はもはや何も口にしていない。
 お母さんが買ってくれていたゼリー飲料も全く受け付けない。
 戻す以前に口が付けられない。
 洗濯物の柔軟剤の匂いが少しでもすると吐き気に見舞われる。
 栞さんがすぐに無香料のものへシフトしてくれたから、今は問題なく過ごすことができているだけ。
 ここ数日、栞さんは部屋へ入ってこない。
 この人だけはどうしても傷つけたくなくて、部屋に入ってこないでください、とお願いをした。
 芯の強い人だから強行突破されるかもしれない、と覚悟をしていたけれど、それはなくて、時々ドアの向こうらこちらをうかがっているのがわかる程度。
 いくら入らないでほしいと言っても躊躇せずに入ってくるのは蒼兄と唯兄。
 少し前にはお母さんとお父さんも帰ってきた。
 けれど、
「会いたくない。お母さんたちはここにいるべき人じゃない」
 と、追い返してしまった。
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