光のもとでⅠ
 お母さんは、
「娘がこんなに具合が悪いときに仕事なんて手につくわけがないでしょうっ!?」
 と、発狂していたけれど――。
「それでも、私、まだ笑っていられるだけの余裕があるの」
 と、笑顔で答えると、お母さんは絶句した。
 お父さんは怒るでも激昂するでもなく、お母さんのフォローをしてくれた。
 お母さんをなだめすかして部屋から出すと、しばらくしてお父さんが戻ってきた。
「翠葉、どうしてそんなふうに笑うんだ?」
 どうして――。
 もう、自分でもよくわからなくなってきていた。
「どんな翠葉でもかわいい娘だ。でも、いつでも翠葉らしくいてほしいなぁ……」
 私らしく――。
 私らしくってどんなだったかな……。
「碧同様、父さんも翠葉に付いていたいのは山々だ。でも、やっぱり父さんは現場に戻らないといけない。……翠葉、病院に入らないか? 毎日のように点滴をしに来てくれる湊先生へかける迷惑を考えるならば、病院へ入るべきだと思う。もう、入り時じゃないかな?」
 確かに、湊先生には迷惑や負担をかけている。
 お父さんはよくわかっている。
 私が人に迷惑をかけたくないと思っていることや、これ以上は家でどうこうできる域でもないことも。
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