光のもとでⅠ
 あぁ……。
 昔、高貴なお姫様は人前に顔を晒すことはなく、御簾越しに男の人の話を聞くだけだった、というあれだろう。
「秋斗さん……私、今はできれば誰とも会いたくないんです」
 きっと蒼兄や唯兄からも聞いてはいると思う。
 でも、私の口から言わないとだめだろうと思った。
「俺は邪魔なのかな」
「はい」
「躊躇いもなく答えてくれるね」
「躊躇う必要がないからです」
「……でも、誰かがこの部屋にはいることになっているんでしょ? それなら俺はここにいてもいいわけだよね」
 秋斗さんが天蓋を手に取り、中へ入ってきた。
「やっぱりじかに会いたいよ。好きな子がつらい思いをしているなら、せめて側にいたい。俺はそう思う」
 っ――だめだ、表情を変えるな。何も気取られるなっ。
 一度壁側を向いて何度も聞いた声を思い出す。
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