光のもとでⅠ
 精神疾患――その部類に含まれる。
 翠葉ちゃんは精神的なストレスから、時々一定期間の記憶がなくなることがあった。
 身体自体は起きているし行動もしている。
 けれど、その間の記憶がバッサリと抜け落ちてしまうことがあるのだ。
 解離性障害と一括りにしても症状は様々。
 解離性遁走――自分を知っている人がいない場所へ行ってしまう。けれど、そこまでどうやって来たかの一切を覚えていない。もっとひどいと自分の名前すら忘れてしまうことがある。
 よく知られるものだと解離性同一障害。つまりは多重人格。
 主となる人格のほかに別の人格が確立されてしまい、そちらの人格が表に上がってきているとき、主人格は睡眠状態にあるため、その間の行動を把握できない。
 彼女の場合は解離性健忘。
 ごく軽いもので、ただ、その間の記憶が抜け落ちてしまう、というもの。
 意識が跳んでいる時間帯も短時間で、本人からしてみたら、「ぼーっとしている間に時間が過ぎていた」というような認識しか持たない。そんな症状。
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