光のもとでⅠ
「ああいう状態のこと、解離性障害っていうんだ。秋斗と栞ちゃんがいないだけで、その症状が少し出ている気がする」
 ……栞ちゃんは毎年のこととは言え、時期的には少し早い気がする。
 でも、そうか……だから楓が来たのか。
「日曜に戻る。……彼女に会いに行く。でも、楓がそんな顔して心配するようなことはもうないから」
「どう答えを出した?」
「……付き合うっていうのはなしだ。しばらくは見守るよ。それが彼女にはいいんだと思う。俺の中に流れている時間と、彼女が感じている時間の流れはきっと違う。彼女はものすごくゆっくりとした時の中を生きている。それをかき回すようなことをすると、彼女は恐怖感を抱くんだと思う……」
「……秋斗がこうも考えを変えるとはね」
 嫌みも忘れずに口にするけど、その口もとが軽く緩んだ。
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