光のもとでⅠ
 翠を保健室に送り届けると、行きの倍以上の速さで俺たちは歩く。
 それが俺たちの普段の速度。翠の歩みは一般的なそれとはずいぶんと異なった。
「翠葉、かなり痩せたな……」
「あぁ……」
「今日の授業に出たら、今学期はもう登校してこないって桃華が言ってた」
「そう」
「湊ちゃんから何か聞いてる?」
「いや」
 そんな会話をしただけで二階に着いてしまう。
「次、佐野が迎えに行く予定」
「……わかった」
 階段を上がりながら考える。
 翠は今頃点滴を打たれていることだろう。
 けれど、五百ミリリットルを落とすのには時間が足りない。
 時間から考えれば二百ミリリットルかと思う。でも、あの翠の状態なら五百を入れるに違いない。
 姉さんのことだ、点滴をさせたままクラスへ戻すだろう。
< 1,695 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop