光のもとでⅠ
 どう起こそうか躊躇った。
 身体は痛みが走るかもしれない。
 声で起こしてびっくりさせるのも忍びない。
 最終的に思いついたのは頬をつつくことくらいだった。
 指先でつついた頬は、少しのぬくもりも感じず冷たいものだった。
 思わず、自分の手の体温を分けたくなるほどに。
 翠は、「ん……」と一度身じろぎ目を開ける。
「……司先輩?」
「そう。あと十分で終業チャイムが鳴る。その前に教室まで移動」
 点滴スタンドをカーテンの外に出したものの、翠はまだ目を白黒とさせている。
「今、授業中ですか?」
「そう。……うちのクラス自習だから」
「なかなか気の利く弟でしょ?」
 姉さんが会話に加わると、翠はようやく身体を起こした。
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