光のもとでⅠ
 簾条の企みにには毎回、よくやる、と感心させられる。若干呆れも混じってはいるが……。
 でも、それを悟られるのは癪で、
「本当に嫌みなやつは、努力してない、って答えると思うけど?」
 そんな話をしていると保健室に着いた。

 保健室には翠の母親がいた。
 以前、一度会ったことはあるが、とくに何かを話したという記憶はない。
 性格は翠とは似ていなさそうだが、顔のつくりや体型が翠と酷似していた。
「大丈夫だった?」と翠に声をかけ、娘の状態にほっとするとこちらを向いた。
「翠葉の母です。翠葉にいつも良くしてくれてありがとう」
 骨格が似ていると、こんなにも声が似るものか、と思う。
 そんなことは身内で嫌というほどには知っているけれど、改めて実感させられた。
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