光のもとでⅠ
 ただ、翠の声よりは若干低く、落ち着いた感じの声。
「簾条桃華です。翠葉とはクラスが同じで席が前後なんです」
「あら、あなたが桃華ちゃんなのね。翠葉からよく話を聞いているわ。いつもありがとう」
 簾条に先を越されて、自分が出遅れた気がした。
「先日はどうも……」
 以前会っていることから自己紹介をする必要はとくにない。だとしたら、それ以上何を口にすればいいものか……。
 クラスが違うというよりは学年事体が違う。接点といえば生徒会くらいなもの。
 改めて自分と翠の関係を考えてしまう。
「こちらこそ。司くんのことも翠葉から話を聞いてるの。いつも助けてくれる人って……。本当にお世話になっているみたいでありがとう。きっとこれからも手のかかるクラスメイトで後輩だと思うの。でも、翠葉のことお願いできるかしら……」
 入学してからずっと御園生さんに送迎させているくらいだ。相当心配なのだろう。
「もちろんです。助けになれるのならいくらでも」
 簾条の言葉に考える。
 俺はなんと答えたらいいのか……。
 これ以上簾条に遅れを取るのが嫌で、適当に口を開いた。
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