光のもとでⅠ
 件名のみで本文なし。
 姉さんからのメールだった。
 すぐに削除しようと思い、とどまる。
 次に会って誤解を解くまでは削除するのはやめよう。
 まるで戒めのように苦々しくメールを閉じた。
 ――でも、次に会うときっていつ?
 翠はもう学校に出てこない。そのまま夏休みに入る。
 俺が自宅まで行くのか?
 何をしに……? 誤解を解くためだけに……?
 ……どうしてだかものすごく抵抗がある。
 まるで、誤解を解くことが告白のように思えて……。
 でも、翠のことだ。「好き」という言葉を出さない限り、俺が翠を好きなことなんて気づかないのだろう。
 いつ簾条と別れたのかは不明。
 自分の教室に戻れば、俺はまだ腹痛の病人扱いだった。
 あっちもこっちも、いつ弁解したらいいものか――。
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