光のもとでⅠ
 あんちゃんが毎日のように見ていたのは天気予報のサイト。
 まるで祈るようにそのサイトを見ていた。
 きっと、梅雨明けの時期を今か今か、と思って見ていたのだろう。
 もしかしたら、零樹さんや碧さんも同じなのかもしれない。
 ここのところ、あんちゃんと零樹さんたちの会話も沈黙が多い。
 リィはというと、少しでも身体が起こせる時間があるとピアノに触りたがった。
 それはたいてい昼間で、栞さんひとりの補助では危険を感じたから自分が付き添って二階へ上がっていた。
 ピアノを弾く姿すら痛々しかった。
 演奏は、いつものリィの演奏とはえらい違い。
 こんなに痩せてしまったその身体のどこに、これだけの力が残っているんだろう。
 そう思うような演奏。
< 1,715 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop