光のもとでⅠ
 ピアノを壊すつもりで弾いているような、自分が壊れてもかまわないというような音。
 リィは、「つらい」と声に出して言わない。だから、こういう形でしか感情を外に逃がせなかったんだと思う。
 その姿も演奏も、まさに"表現者"としかたとえようがなかった。
 一曲か二曲を弾くのがせいぜい。
 それ以上を弾く体力はないから。
 弾き終わったリィは息を切らした状態でピアノに突っ伏す。
 そのリィを横抱きにして階段を下りるのには慣れた。
 俺は体格がいいほうではないし、普段から身体を鍛えているわけでもない。
 そんな俺でもリィの身体は重いと感じるようなものではなかった。
 人ってこんなに軽かったっけ……なんて心の中で思いながらセリと比べる。
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