光のもとでⅠ
 出した宿題は「わからなくてできませんでした」「急遽パーティーに出席することになってしまい――」。なんだかんだと理由をつけては宿題をしてこないバカ生徒。
 理解力はないは記憶力は乏しいは、それなりの努力もしないはの三重苦。
 見ているだけでイライラする。
 今回ばかりは見誤ったと思った。
 兄さんの尻拭いとはいえ、これは結構な過酷労働だ。
 俺、たぶん塾の講師や家庭教師って役職には向かないと思う。

 その日の夜、いつものように自室で勉強をしていると長いこと聞いていなかった着信音が鳴った。
 すぐに応答すると、
『夜遅くにすみません……』
 久しぶりに聞く翠の声が、耳にダイレクトに届いた。
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