光のもとでⅠ
 駅のロータリーで車を停めると、
「ここでごめんね」
 と、謝られた。
 きっと、すぐにでも翠葉のもとへ帰りたいのだろう。
 ふたりして、お礼を述べ、代わりに夏休みの宿題を渡した。
 宿題なんかできる状態なのかも怪しい。
 電車に乗り、佐野と言葉少なに話す。
「蒼樹さん、めちゃくちゃきつそうだったな……」
「そうね……。実際にきついんでしょう」

 これが私の知っているすべて――。
 ただ知りたいだけだろうと思った。
 でも、いたずらに不安にさせたり心配させるのは得策じゃない。
 藤宮司はインターハイを控えている。
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