光のもとでⅠ
 この子は現場のムードメーカー的存在で、若いのに周りからの信頼も厚い。
 それだけいい仕事、引けを取らない仕事をしてきたのだろう。
 で、俺はというと、冷静っちゃ冷静かなぁ……。
「なんていうかさ、慌てても仕方がないことってあるじゃん? でもって、俺は一家の大黒柱なわけだよ。揺るがないでいなくちゃいけない部分はそうでなくちゃダメだよね」
「……もうっ、わかりましたから、早く碧さんを病院に連れていってあげてくださいっ」
「うん。本当に迷惑かけてごめんね」
「私なんて、こんなのの百倍くらい碧さんの足引っ張ってきましたから全然大丈夫ですっ!」
 りっちゃんは、がんばると意気込んで建物へ戻っていった。
「ったく……うちの女どもは手がかかる」
 どうしてこんなになるまで働いて気を紛らわせようとするかね……。
 それとも、こうしていないと精神バランスを保てなかったんだろうか。
 どっちがいいのかわからないから見て見ぬ振りをしていたが……。
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