光のもとでⅠ
 山の中へと続く小道を歩く。
 たぶん、碧もここへ行こうと思ってたんだろうな。
 一緒に来たことはない。でも、誰かがきれいにしているのには気づいていた。
 山の中にはかなり古びた趣のある祠がある。
 ここに来ては翠葉のことを祈る日々。
 それが俺の習慣になっていた。
 周防に渡されたスポーツドリンクを飲みつつ、娘のバイタルに目をやる。
 いったいどうしてあげたらいいものか……。
 蒼樹だってそろそろ限界なはずだ。
 ザッザッ――。
 こちらに人が向かってくる足音。
 この歩き方は静だよなぁ……。
 足音まで偉そうな感じ。
 そんなことを考えては笑みがもれる。
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