光のもとでⅠ
「……それ、どうして黙ってた?」
「……言ってもどうにもならないからさ。けど、静には感謝してるよ。静経由で藤宮病院にかからなかったら、紫先生とも出逢えなかったし、今でも病院をたらいまわしにされていただろうさ。それを考えれば、今は見放さないでくれるお医者さんがいるだけでもありがたい」
 翠葉が中学の頃は散々だった。
 あの気丈な碧が鬱になるくらいには……。
「静、お願いがある」
「なんだ?」
「今の碧を幸倉に戻すわけにはいかない。でも、碧には休養が必要だ。静のマンションに置いてもらえないか?」
「こんなときになんだが、仕事のほうは?」
「さっき確認した。先一ヶ月までの仕事を終わらせてあった。あとは現場がそれに添って動くのみ。……あいつ、ここ一週間ろくに寝てないんだ。日中は現場で指揮をして、ホテルに帰ればデスクワーク。食事を摂ってもすぐに戻す……」
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