光のもとでⅠ
 何が正しくて、何が間違っているのか、いつからかわからなくなっていた。
 蒼樹から送られてくる音声データを聞くたびに、胸が引き裂かれる思いだった。
 こんなにも泣いているのに、こんなにも痛がっているのに、言葉という言葉を発しない娘。
 ただひたすらに耐えようとする娘。
 そんな翠葉になんて声をかけられただろう。
「大丈夫」なんて言葉はかけられない。
「がんばれ」なんて言葉も言えるわけがない。
「良くなる」なんて言葉は無責任すぎる。
「つらいな」なんて言葉は救いにすらならない。
 いっそのこと、泣き喚いてくれたほうが楽だったかもしれない。
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