光のもとでⅠ
「お待たせしました」
「そんなことないよ。こっちこそ急に悪い……」
「いいえ……。少しでも役に立てるなら嬉しいです。それに、不謹慎ですが、会えて嬉しいです」
 はにかみながら言われて、急に思い立つ。
 キスがしたい、と……。
「桃華……キス、したことある?」
「なっ、ないですっっっ」
 いつになく慌てる彼女がかわいかった。
「……嫌、かな」
 彼女の目を見ると、一瞬見開いた目が一気に細まった。
「嫌なわけないじゃないですか」
 とても嬉しそうに、恥ずかしそうに笑った。
 自分のシートベルトを外し、すぐに彼女の唇に自分のそれを重ねた。
 優しく……優しく、重ねるだけのキス。
 それで十分だった。
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