光のもとでⅠ
 俺はどこで何を間違えたのだろうか――。
 左手に握ったままの彼女の髪の毛を見て何を考えることもできずにいた。
 車に乗り込み、ただ手にある髪を見るだけ。
 長さにして五十センチ弱……。
 助手席に置いてあったA4の封筒に髪の毛を入れ、封筒の中に散らばる彼女のきれいな長い髪を見ていた。
 惜しげもなく切り落とされた髪を――。
 ふとした拍子にこだまし始めた言葉たち。
 ――近寄りすぎないように。
 それはこういうことを指していたのだろう。
 俺は近寄りすぎた。
 自分なら大丈夫、とどこかで高を括っていた。
 だから、こうなった……。
 彼女を傷つけた。俺が、彼女を傷つけた。
 きっと、心も物理的にも。
 彼女は――彼女は、自分で自分を傷つけた。
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