光のもとでⅠ
18~23 Side Akito 05
夕飯はすき焼きだった。
栞ちゃんが作るのは関西風の少し甘めのすき焼き。
彼女の前にはチーズタルトとハーブティが置かれている。
すき焼きの鍋を視界に入れた途端、彼女はばっと視線を逸らした。
もしかしたら、今は食べ物事体をあまり見たくないのかもしれない。
現に、チーズタルトも半分というところで持て余している。
しばらくすると、「ごめんなさい」と一言口にして残すことに決めたようだ。
それに対して、
「何も食べないよりはいいわ」
と、栞ちゃんが笑う。
その瞬間、彼女の表情が変わった。
なんとも言えないような表情。
自分を追い詰めいているような……そんなふうに見える。
そして、食べ物から逃げるように、早々に自室へ下がった。
「すき焼きの匂いはちょっときつかったかしら? 水炊きにすれば良かったかな」
栞ちゃんが言うと、
「この時期はテーブルに食べ物が乗っているだけで部屋から出てこなくなることも少なくないので、気にしないでください」
蒼樹が苦笑して答えた。
「拒食症気味?」
俺が訊くと、
「そうとも言えなくはないんですが……。まず血圧が低すぎて体を起こしていることすらがつらい状態だし、痛みがひどいと食べるどころじゃないって感じですかね」
「これからが正念場ね」
と、珍しく栞ちゃんがため息をついた。
「俺、このあとは明日締め切りのレポート仕上げなくちゃいけないので、先輩、時間があるようなら少し翠葉の話し相手になってもらえませんか?」
「それは喜んで」
「でも、あまり動揺させるようなことは話さないでくださいよ?」
しっかり釘を刺された。
俺ってそんなに信用ないのかな?
栞ちゃんが作るのは関西風の少し甘めのすき焼き。
彼女の前にはチーズタルトとハーブティが置かれている。
すき焼きの鍋を視界に入れた途端、彼女はばっと視線を逸らした。
もしかしたら、今は食べ物事体をあまり見たくないのかもしれない。
現に、チーズタルトも半分というところで持て余している。
しばらくすると、「ごめんなさい」と一言口にして残すことに決めたようだ。
それに対して、
「何も食べないよりはいいわ」
と、栞ちゃんが笑う。
その瞬間、彼女の表情が変わった。
なんとも言えないような表情。
自分を追い詰めいているような……そんなふうに見える。
そして、食べ物から逃げるように、早々に自室へ下がった。
「すき焼きの匂いはちょっときつかったかしら? 水炊きにすれば良かったかな」
栞ちゃんが言うと、
「この時期はテーブルに食べ物が乗っているだけで部屋から出てこなくなることも少なくないので、気にしないでください」
蒼樹が苦笑して答えた。
「拒食症気味?」
俺が訊くと、
「そうとも言えなくはないんですが……。まず血圧が低すぎて体を起こしていることすらがつらい状態だし、痛みがひどいと食べるどころじゃないって感じですかね」
「これからが正念場ね」
と、珍しく栞ちゃんがため息をついた。
「俺、このあとは明日締め切りのレポート仕上げなくちゃいけないので、先輩、時間があるようなら少し翠葉の話し相手になってもらえませんか?」
「それは喜んで」
「でも、あまり動揺させるようなことは話さないでくださいよ?」
しっかり釘を刺された。
俺ってそんなに信用ないのかな?