光のもとでⅠ
「何って……具合が悪いから横になっているだけ。ただ、それだけです」
 いつもとは声が違う。
 あまりにも余裕がありすぎる声だった。
 いつもの余裕がない感じではなく、余裕がある感じに違和感を覚える。
 けれども、息は肩でしているわけで……。
 どこからどうみても声のほうが演技――。
「ここでできる処置なんて限られてる。病院へ行け」
「……司先輩も説得要員?」
 嘲るような笑い方。
 ……本当だ。いつもの翠じゃない。
 翠はこんな笑い方はしない。
 一瞬、解離性障害という言葉が頭をよぎった。
 今の翠は翠であって翠ではないのか?
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