光のもとでⅠ
「一気に飲もうとするな。咽るだろ」
 一度カップを口から離した。
「少し落ち着いたか?」
 止まったかと思った涙が途端にボロボロと零れだす。
 ……俺、何か地雷踏んだ?
 それ、どこら辺にあった?
「先輩……私、病院に入っても治療できないのよ……?」
「緩和ケアは受けられるだろ?」
「でも……緩和するだけよ? ベッド待ちの患者さん、たくさんいるの知ってる……。なのに、私なんか入っていいのっ!?」
 前にも思ったことがあるけど、翠はバカだと思う。
「あのさ……今の翠はどっからどう見ても重病人。このままだと死ぬけど?」
「それでもいいと思った。……痛みから解放されるなら、もう、それでもいいと思ってる」
 今度は俺が驚愕する番だった。
 そこまで追い詰められるほどの痛みを感じたことはない。
 俺の想像できる範疇を超えていた。
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