光のもとでⅠ
「怖いの……。麻酔の治療が怖い……。病院に入ったらすぐに高カロリー輸液の点滴もされるのでしょう? それも怖い……。でも、痛みが襲ってくるのも怖い。もうやだ……全部やだ」
「……最初からそう言えばいいものを」
 カップをサイドテーブルに置き、泣いて震える翠を抱きしめる。
 本当はこういうところで抱きしめたくないんだけど……。
 だいたいにして、何……。これ俺の役目?
 間違ってるだろ? 本来、御園生さんか秋兄あたりがするべきことなんじゃないの?
「……みんな優しすぎる、だから、だめ……。近くにいられたら、私ひどいこと言っちゃう……」
「翠……俺、結構ひどいこと言われた気がするんだけど……」
「だって……司先輩は入ってきたところから容赦なかったから……。そのうえお茶飲むとか言い出すし、言い返さないと負ける気がするし……絶対零度の笑顔向けるし……」
「翠、もしかして負けず嫌いだったりする……?」
 翠は、「え?」という顔をして首を傾げる。
「あぁ、別に深く考えなくていいから……。とりあえずこれ、もう少し飲めば?」
 カップを再度口もとに運ぶと、今度はゆっくりと少しずつ飲みだした。
「飲めそうだな」
 翠は素直にコクリと頷いた。
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