光のもとでⅠ
「ほら」
 ヒラヒラ、と手を振られる。
 戸惑いながら自分の右手を差し出したら、大きな手に掴まれた。
 掴まれた、よりも、捕まれた、気がしてしまう。
「冷たい手だな」
 笑いながら、その人はナースコールを押し、「羽毛布団追加」と口にした。
「足も触るぞ」
 綿毛布をまくられ、足先に触られる。
「こっちも冷てぇな……。君、血圧低いは脈圧ないは不整脈あるは、若いのに苦労人だねぇ」
 薄く笑みを浮かべた様に腹が立った。
 どうしてかわからないけどケンカを売られている気分。
 そんなの、自分がなりたくてなってるわけじゃないっ。
「くっ、顔に出るねぇ」
「司先輩っっっ」
 どうしたらいいのかわからない感情を、真横にいる先輩に向ける。
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